2019年度広島史学研究会大会シンポジウム第2回準備会

 

テーマ:「8・9世紀ユーラシア世界における周縁と秩序」

日 時:2019年9月17日(火)13:00~

場 所:広島大学東広島キャンパス 文学部棟1階A152

報告題目と報告者(報告順):

 

日本史 広島大学大学院総合科学研究科准教授 渡邊 誠氏(平安時代史)

西洋史 北海道教育大学准教授 津田 拓郎氏(西欧初期中世史) 

東洋史 九州大学大学院人文科学府教授 清水 和裕氏(イスラム文明史学) 

  

形 式:本番をある程度想定して、各自40分程度の発表をしていただき、

シンポの方向性について、参加者も加わり議論する。

 

なお、準備会終了後、ささやかですが、懇親会を予定しております。

 


統一テーマ:89世紀ユーラシア世界における周縁と秩序

 

東アジアのなかの日本律令国家「唐風化」再考        広島大学  渡邊 誠

 唐の国家体制を継受して成立した古代日本の律令国家体制は、唐を中心とする国際的な政治秩序のもと、その辺縁部に唐に倣った小世界を構想したものであった。

 その国際関係のもとでは、唐の文化が規範的価値として共有された。しかしその一方で日本では、外交を含む国家儀礼の場に唐の礼制とは異なる「古礼」が残存するとともに、記紀神話イデオロギーも無視しえない大きな役割を有していた。

 それらの要素は特に平安前期(九世紀)の「唐風化」によって払拭されていくが、それを唐の制度・文化に対する理解の深化とするだけでは不十分である。

 本報告では、日本律令国家における唐礼と古礼の受容と残存の関係を対外的な政治関係のなかで捉え直したい。特に、唐と日本という中心対周縁の一対一の関係ではなく、日本と新羅・渤海という周縁対周縁の国際関係から照射することによって、古礼とその「唐風化」の意味を考える。

 

8・9世紀西ユーラシア世界におけるカロリング朝フランク王国

                           北海道教育大学 津田拓郎

 「グローバル・ヒストリー」が提唱されて久しいが、ヨーロッパ初期中世史の分野においては、国内外問わず西欧中心主義的歴史像が依然として強く残り続けている。そこでは、フランク王国及びカール「大帝」の役割が過大評価され、近隣諸国との関係においても、フランク王国が圧倒的なプレゼンスを有していたかのような叙述が生み出され続けているのである。しかし、近年になってようやくこうした歴史像の克服に向けた動きが現れ始めている。本報告は、89世紀西ユーラシア世界におけるフランク王国の位置づけが、研究史上いかなるかたちで西欧中心主義的に語られてきたのかを明らかにしたうえで、そうした見方を再考する試みである。

 

イスラーム帝国アッバース朝における「周縁」と改宗者   九州大学  清水 和裕 

8世紀に成立したイスラーム帝国アッバース朝においては、地理的周縁とともに社会的周縁の問題が大きな意味をもった。これは、アラブに対する非アラブ、イスラーム教徒に対する非イスラーム教徒の対抗関係が、徐々に崩れ、後者の社会進出が顕著となったからである。地理的周縁に位置する非アラブの人々が、ときにイスラームに改宗し、またときには旧来の宗教を維持したまま、中央のイラク・バグダードに進出し、社会的な地位を獲得していった。特にカリフ宮廷では、そのような人々が、その周縁性ゆえに、カリフとの個人的な関係性を確立し、行政、軍事、文化の面で顕著な活躍を見せたのである。本報告では、マワーリーの活動とサービア教徒の文化進出を通じて検討したい。